。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「と、まあその話しはおいといて。早くイチをどうにかしなきゃ、マジで俺らの命がヤバイ。
何とか先手を打てないものか」
戒はむーと唸ってソファの上で胡坐をかいた。
「で、でもさっきのスナイパーはイチじゃないって…」
「一結じゃないにしても、共犯者の男と言う可能性が高いですね」とキョウスケが冷静に答える。
「まぁ俺はさっきイチをどうにしなきゃ、って言ったけどあの女は少なくとも今は命を狙う程の悪意があるとは思えねぇな」
またもちらりとキョウスケを見て、キョウスケは「何なんですか、さっきから」と迷惑そうに顔をしかめた。
「もしかして仲間割れかもな。互いの目的が一致しなくなったかも」
戒はそう言って考え込むように顎に手を置いた。
「そうなるとイチは最早邪魔者」
戒の言葉にキョウスケが目を開いてごくりと喉を鳴らした。
「まぁこのタイミングで“それ”はないだろうけどな。琢磨さんが黙っちゃいねぇだろうし」
……叔父貴が…?
何でイチと叔父貴に…
「分からないことだらけですね」キョウスケがため息を吐き、
戒は考え込むように黙り込んだ。
鼻を押さえながらテーブルの縁をじっと見据えている。
「どうしたんだよ、さっきから。くしゃみでも出るのか?」
「いや。さっき俺、絶対あの香りを嗅いだんだよね」
「香りって、あのオピウム?だっけ??あれがどうしたんだよ」
「オピウム―――?」
キョウスケが目を細めて僅かに眉間に皺を寄せる。
キョウスケの呟きに、戒がにやりと意味深に笑った。
「お前も気付いた?
意味は阿片。衝撃的なネーミングだよな。
彩芽さんが使ってるって香水だ。あの香りがさっきの現場で香ってきた」
「近くに居たってことでしょうか」
「近くに居たって別に変じゃないじゃん。だってあの人ドクターの女だよ?何か用があったかもしれないし」
「偶然でしょうかね」
戒もキョウスケもどこか納得いかないようじっとテーブルを見据えたまま黙り込んだ。