。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「……ふ」
口付けの合間に朝霧が甘い吐息を漏らして、俺の頬に手を這わせてくる。
俺は朝霧の腰に手を回して、スーツのインナーに着用していた彼女の黒いカットソーの中に手を忍ばせた。
さらりと心地よくて、しっとりと肌触りの良い感覚に一瞬その気になりかけたが、目的はそれじゃない。
俺がカットソーを捲り上げると、朝霧は俺の脚に脚を絡ませてきた。その仕草でさえ挑発されてるような色っぽさを感じる。
ここが会社の給湯室でなければ―――なんて一瞬考えが浮かんだが、すぐにその考えも消えうせた。
口付けの最中に朝霧の後ろ姿を見る。
その白くて細い女らしいラインを描く腰の中央に、
トライバル模様の―――蛇のタトゥーが彫られていた。
「玄蛇、“スネーク”の所在を知りたい」
唇を離して彼女の耳元で彼女の“名字”を囁くと、彼女が目を開いた気配がした。
そう
彼女の本名は
―――玄蛇 朝霧。
普段は“鬼塚(オニツカ)”と名乗っているが。
「その名はとうに捨てたわ。無理よ。
それに“兄”とはもう何十年も音信不通だわ。生きてるのかどうかも謎」
「それを探れと言っている」
「それは会長の命令?それともあなたの?」
朝霧がさもがっかりと言った感じで腰を引き、めくりあがったカットソーの裾を直すと、目を細めて俺を覗き込んでくる。
「命令じゃない。これは俺の頼みだ」
そう言うと朝霧はふっと妖艶に微笑んだ。