。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
千里の真剣過ぎる目があたしを捉えていて、あたしは思わず俯いた。
千里はあの花火大会で何があったのか知らない。
言えるわけじゃないし、何があったか思い出すとまた叔父貴のことを考えちまう。
叔父貴は―――昨日家の方に電話が掛かってきたみたいだった。
ちょうどあたしは風呂で、対応したのはキョウスケだった。
銃撃のことについて酷く心配していた様子だったみたいだけど、怪我一つしてないことを知るととりあえずはほっとしてたみたい。
そのあと、あたし自身折り電してない。
「……戒とは…花火大会行ってねぇよ」
ホントのことだ。
「本当だよ!龍崎くんバイト入っちゃって、あたしと響輔さんと三人でいったの」
全部を知ってるリコが慌てて言うと、
「あ、ねぇ千里の飲み物何~?おいしそう♪」とわざとらしく話題を代える。
千里もちょっと疑っているようだったけど、あたしの普通じゃない態度を見てそれ以上何もつ突っ込んでこなかった。
リコ、サンキュ。
それからは当たり障りのない会話で、あたしたちは数学の問題集に取り掛かっていた。
そのときだった。
「いらっしゃいませ~」
入り口の方でウェイトレスの声があがり、何となく顔を上げてあたしは思わず目を開いた。
スーツ姿の若い男女……女の方に見覚えがあった。
ってか!!
「…あ、彩芽さん!!!」
思わず立ち上がると、リコも驚いたように目をぱちぱちさせ、千里だけが不思議そうに「知り合い?」と聞いてきた。
「あら」
彩芽さんの方もびっくりしたように目を開いて、こちらに向かってきた。