。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「何なんだ、あの人知り合い?」
千里がちょっと機嫌悪そうに奥の席を振り返ってる。
「女の人の方は―――ちょっと知ってるって程度。でも男は初対面だ」
そう―――初対面な……筈。
「はぁ~すっごいかっこいい人だったね♪こんな難しい問題もちょっと見ただけですぐ解いちゃうなんて!」
とリコが、うっとりと頬を緩ませている。
あたしはもう一度二人が座っている奥の席へ目を向けた。
男がタバコを取り出し火を付けている。その左手薬指にきらりと光るリングが見えた。
既婚者か。そうには見えなかったけど。←結構失礼??
しかし、何て言うか雰囲気が―――カタギっぽくない。
かと言って筋もんでもなさそうだ。
目を伏せてタバコに火を灯していた男が、あたしの視線に気付いたのかふっと顔を上げ、
口元にうっすらと笑みを浮かべる。
ドキリとして慌てて視線を逸らそうとしても、まるで金縛りにあったかのように動けない。
タチバナはなにやら楽しそうに笑いながら、彩芽さんに顔を寄せ耳打ちしていた。
な、何喋ってんだろ……
ってか何あの雰囲気!
妖しすぎるだろ!!
彩芽さん!あんたドクターって男が居るのに!しかもあのタチバナだって奥さんがいるだろうに!!
浮気!?不倫!!
ってかドクターもかなり変わってるからな…心変わりしたくもなるだろうな……
じゃなくて!
「ちょっと、タチバナくん!」
と彩芽さんが声を荒げて、慌てて振り向いた。
思い切り彩芽さんと目があっちまって今度こそあたしは慌てて顔を逸らした。