。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
*戒Side*
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** 戒Side **
昨日の銃撃から一日。
俺は今畑中組が経営していると言うクラブZの裏口の路地で腕を組んで建物の壁にもたれかかっているところだ。
畑中組は以前、疑惑の女―――彩芽さんが居た場所だ。クラブZでホステスをしていたということが本当なのか知りたい。
時刻は夕刻、19時。
バイトをあがってすぐに向かった。丁度良い時間帯だ。
向かい側では響輔が同じように腕を組んで、壁にもたれかかっている。
建物と建物の間の通路は細く、表は賑やかな歓楽街が広がっているが、ここを塞ぐと奥は袋小路だ。
逃げられないようにこうして塞いでいるわけだが。
「てかお前は来なくても良かったのに」
俺が響輔を見ると、
「一人より二人の方がいいでしょう」と響輔。
「俺はお守りを頼んだつもりはないが」と返すと、響輔はちょっと笑った。
「いつまでもお守りをするほど暇じゃないですよ」
響輔はそう言ったが、心配でないにしろやっぱり気になるようだ。
俺たちはいっつも二人だった。
俺は響輔相手だったらとことん気を許せるし、喧嘩をするときの呼吸も感じようとしなくても、ぴったりと合う。
朔羅もやりやすいが、こいつもあいつに負けず劣らず強いヤツだ。
「出てきましたよ」
響輔が目配せして、裏口のアルミサッシの簡単な扉からギャルソン風の制服を着た若い男が一人、ゴミ袋を持って出てきた。
見たことのある顔だ。ここに来たとき伸した(ノシタ)野郎の中の一人だった。
すぐ傍にある大きなポリ製のゴミ箱にそれを捨てるようだ。
その前に俺たちの存在に気付いた男は、顔を上げるとはっ!と身を強張らせた。
「よーぅ、会いたかったぜ。兄弟」
俺が笑いかけると、男は顔を青くさせてゴミ袋をどさっと床に落とした。