。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「それから?」
俺が女の元にしゃがみこみ顔を覗き込むと、女は口元をきゅっと引き締めておずおずと俺を見上げた。
「お、女が同伴だったら確実に入れると思う」
「女?」
「客が大負けして、キャッシュやカードで払えない場合のことを想定して…」
「なるほど、担保ってわけか」
「嫌な響きですね」響輔が顔をしかめて、俺もそれには頷いた。
賭け金を払えない客から女を奪って、その女を今度は別の場所で働かせるなり売るなりして店は絶対に損をしない仕組みになってるようだ。
「女の質がいいと、あいつらはその客に狙いを定めてわざと負けさせるんです。
ディーラーも全部組の者だから。細かい賭け金より女で稼ぐほうが効率的だし、大金が入るから」
聞けば聞くほど胸糞悪くなる話しだった。
こんなあくどい商売を琢磨さんが許すはずがない。
だがもう一つ気になることがある。
「クスリは?そういう噂は聞いてへん?」
俺が聞くと、女は言い辛そうに締め上げられている男を見上げた。
「大丈夫や。俺らがあんたを守ったる。だから全部言うてまえ」
俺が軽く肩を叩くと、女は意を決したように頷いて口を開いた。
「あたしははっきりとは知らない……でもそういう噂を耳にしたことがある。あくまで噂だけど」
女はしつこいほど前置いた。本当に噂しか知らないのだろう。
「裏カジノを隠れ蓑にして、そこで裏取り引きが行われてるとか…」
「なるほど―――ね」
賑やかなカジノの裏側で、客は賭け事に夢中だ。その騒がしいさなかで裏では取り引き―――か。
考えたもんだぜ。