。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
男が逃げ去っていくのを見届けて、俺たちは女を立たせて表通りに出た。
いくら騒がしいクラブと言っても女が一人、ボーイが二人も消えれば店のもんが異変に気付く。
夜の歓楽街はこれからが賑やかになる時間帯だ。
赤、青、黄色、ピンクに紫。
鮮やかなネオンで光る街中でタクシーを拾うと、何もないような素振りで三人乗り込みその華やかな街から遠ざかった。
「あ、あんたたち何者なの?高校生…ぐらいでしょ?」
女が探るように聞いてきて、でもさっきまでの怯えの色はすっかり消えていた。
「俺?俺らは正義のヒーロ~♪」
冗談めかして笑うと、
「何が正義のヒーローや」と響輔が呆れたように吐息をつく。
「何者でもいいわ。あたしをあそこから救い出してくれたわけだし。ありがとうね、
小さなヒーローさん」
「小さいだけ余計やわ。安心するのはまだまだや。カジノで一勝負して、ヤクの取り引き現場を押さえてからやな。
それともう一つ聞きたいんやけど、クラブZの経営者て畑中組の組長なんか?」
「…いいえ、畑中組の組長補佐の男よ」
「その経営者が愛人かこってたって話し、あんた知ってる?」
俺がずけずけと聞くと、女はかぶりを振った。
「そんな話し聞いたことないわ。まぁ確かにいかにも好きそうだけど、決まった女は居ないし。そもそも結婚してないわ」
女の言葉に俺と響輔は思わず顔を見合わせた。