。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。


でも、もしかして響輔はあたしにヤキモチを妬いたのかしら。


レストランの屋根の上でバイクに跨り、あたしたちの様子を見下ろして会話を聞いて…


あの男に渡したくない、って思ったのかしら。


だから強引とも呼べる方法であたしをさらうみたいに……


なんてちょっと期待をしてしまったが、


「ちょっとあんたに聞きたいことがあんねん」


あっそ


ガクリと項垂れる。


何よ!ちょっとでも期待したあたしがバカだったわ!!


あぁ!!雨降ってくれないかしら!それでもってあたしたちはここでさよなら。


でも風に乗って香ってくるのは乾いた夏の空気で、雨の気配どころか雲ひとつ流れていない。


蒸し暑い夏の夜の匂いに混ざって、響輔の柔軟剤の香りを風が運んでくる。





さよなら



したくない






どんな理由であれ、あたしはほとんど知らないあの男とふわふわのベッドで体を絡めるより、


蒸し暑かろうと、虫がいっぱいいようと、ムードがなかろうと―――響輔と二人、古びた神社で喋ってた方がいい。


あたし、相当イカれてるかも。


前はそんなこと全然思わなかったし、そもそも選択肢に入れることもなかった。


あたしはため息をついて、無言で頷いた。


「何よ、聞きたいことって」


うんざりしたように言うと、


「あんたの好みのタイプってあんなの?随分おっさん好みやね」


「違っ!ってかそれを聞きたいためにわざわざあんな派手なことしたの!」


「派手やないやん。まぁおもろかったけどな」


おもろいって、何なのよ!!






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