。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
恋人!?
◆ 恋人!? ◆
結局、あたしはその言葉に何も返せずにドクターに促されるまま、こいつの車に乗り込んだ。
「鴇田、朔羅を頼む」
告白の返事をしないあたしに叔父貴はどこまでも優しく最後まで心配してくれた。
「ご安心を。ちゃんとお届けいたしますよ」
ドクターはにこりと叔父貴に笑いかけ、車は発車した。
走り出す車の助手席で、あたしは両膝を抱えて頭を埋めた。
「はぁ……あたし、何てことしちゃったんだろう……」
あんなに大好きだった叔父貴に、あんな暴挙を……
独り言のつもりだったけど、ドクターは
「肌が荒れてますね。生理前だと思いますよ。ホルモンバランスの影響で、精神的に不安定だったせいでしょう。
大丈夫、女性なら誰でもあることですから気にしない、気にしない♪フフッ」
と冷静に(?)返してきた。
う゛…野郎からそう言うこと聞くと妙に恥ずかしいが、だけどこいつは医者だし、慣れてるんだろう。
あたしはドクターの言葉を聞き流して、それでもこっそりと日にちを指で数えた。
あ、ホントだ。
もうすぐだ。
ってか…
「なぁ、あんたはいつからあの場に居たんだ?鴇田はいつあの場に居たんだ?」
もしかしたらあたしたちの会話を聞かれたかもしれない。
叔父貴は知っていたのだろうか―――
知っていて、あんなこと……
今更ながら恥ずかしくなってあたしの体の中がかっと熱くなった。
その痕跡が残っているようで、あたしはきゅっと白衣を抱き寄せる。
「私は少し前からですよ。あなたが反撃(?)に出るぐらいから。弟はその10分ほど前にあそこから去りました。
血が持たないと自分で分かっていたのでしょうね」
そうか……
ってことは、あたしたちに何があったのか、こいつと鴇田は知らないわけで。
でも、あたしの格好を見てドクターは気付いたに違いない。
どうしよう……
このままじゃ龍崎家に帰れない。
浴衣は乱れたままだし、着付け直すことなんてできない。
鈴音姐さんの泊まってるホテルに向かってもらおうか、と一瞬思ったケド、あたしのこんな姿見て勘と頭のいい姐さんだったら気付くはず。
そうしたらまた叔父貴と喧嘩になるだろうし。
リコんちに言って、リコママに直してもらおうか。
いや、どっちにしろ勘ぐられて心配されるに決まってる。
はぁ
どうすればいいんだろ。