。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
だめよ、一結。この男はこうゆうヤツよ。期待するだけ無駄!!
自分に言い聞かせてると、
「ちょっと歩かへん?」
響輔が顎をしゃくって神社を目で指した。
随分古そうな神社で、古ぼけた鳥居が恭しく入り口に構えている。
長細い石碑には“龍神社”と書かれていた。
入り口は小ぢんまりとしていて、中央に朱色の鳥居がずらりと並び小路を囲むように、また人を招きいれようとしているように立っていて、
赤い入り口がぽっかりと開いている。
鳥居の路の所々に石灯篭が置いてあり、オレンジ色のほのかな灯りが灯っていた。
その灯りのお陰か、この時間帯だと言うのに神社特有の神秘的でちょっと怖そうな雰囲気が薄れているようには思えたけど―――
やっぱり夜の神社って、気分いいものじゃない。
「夏の間はこうやって明かりを灯してあるんやて」
響輔はまったく気にしていない様子でそう言って、神社の鳥居をくぐる。
あたしが鳥居の入り口でちょっと不安そうに奥を覗いて立ち止まっていると、
「何や、怖いんか?」
と聞いていた。
「だ、誰が!」
思わず強がって言って響輔を追い抜きずんずん前に進んだけど、やっぱりちょっと怖い。
ちょっと足を止めて後ろを振り返ると、響輔の姿はなかった。まるで神隠しにでもあったように、その存在がきれいに消えている。
あたしの顔から血の気が失せた。
「え!ちょっと!!響輔っ!!」慌てて響輔を探すと、
鳥居の影からひょっこり響輔が顔だけ出して、「ぷ」と吹き出した。
「やっぱ怖いんやん」
からかうように笑われて、ちょっとムっ。でも神隠しじゃなくて―――
安心した。
「鳥居は神域と人間の世界を区画する、言わば結界みたいなもんや。おばけなんて出ぇへん」
物知り。さすが東大生なだけあるわ。
「ってか“おばけ”って、あたしをガキ扱いしないでよ!!」
プリプリ言うと、響輔はおもむろにあたしの手を握ってきた。
「怖いんやろ?手握っててやるから、一緒に行こ」