。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
触れるだけの軽いキスをして、一旦唇を離す。
すぐ近くで反応を窺うように目を上げると、響輔はただひたすらに驚いたように目を開いていた。
あたしは響輔の額に、こつんと自分の額を合わせるとゆっくりと目を閉じた。
そうしても響輔は逃げるように身を後退させるわけじゃなかったし、あたしを押し戻そうともしなかった。
「嘘じゃないよ。
それに何も企んでない。
朔羅なんてやめて、
辛いだけの恋なんてやめて
あたしにしなよ」
すぐ近くに響輔の顔がある。響輔がまばたきをする度にこいつの長い睫があたしの瞼を掠めるぐらいすぐ近く―――
唇まであと数センチ。
爽やかなシトラスの香りを間近に感じて、だけどその口からは何も語られることがなかった。
あたしはもう一度、近づいて響輔の手をきゅっと握ると、
再びキスをした。
バサバサッ
遠くの方で鳥の羽音がする。
キスの合間にちらりと見上げた空に―――朱い色の鳥を見た。
その鳥は白色をしていたかもしれないけれど、鳥居と灯篭の明かりで、きっと
紅色に見えていたのに―――過ぎないのだ。