。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
部屋に入ってもあたしは玄蛇に背中を向けず後ずさるようにして、そろりと後退した。
「教えてよ。何で響輔たちを狙ったの。計画と違うじゃない」
「何で君が狙撃のことを知ってるんだ?ああ、鷹雄から聞いたのか。ってことは鷹雄は私の存在を疑っているのか」
玄蛇はちっとも痛手と思っていないのか、どこか楽しそうに笑った。
「そうよ!何故あたしに黙って勝手な行動取るのよ!!」
あたしが怒鳴ると、玄蛇が一歩あたしに近づいた。
あたしが一歩身を後退させる。するとまた一歩、玄蛇が近づく。
足音は全くしない。本当に蛇のようだ。
「鷹雄は君に何を言った?」
恐怖が足元から這い上がってきて、あたしの身は凍りついたように動かない。
「…な、何も…ただ、甘く見るなと。え、M240?ってのを虎間 戒が見破ったって」
玄蛇は顎に手を当て考えるように首を捻ると、少し間をおいてやがて薄く笑った。
「へぇ、さすがと言うべきだな。正直それは意外だ。彼の言う通り私は彼らを甘く見ていたようだ。
龍崎 朔羅が狙いにいち早く気付いて、標的を撃ち損ねた。
この私の狙いから逃れるなんて、彼らがはじめてだよ」
こいつがどう言う男か―――あたしは知ってた。
狙った獲物はどんな手段を使っても確実にしとめる―――そうゆうヤツだ。
最初から狙っていたわけじゃない。目的は響輔たちをけん制するため……
いいえ、こいつは愉しんでる。響輔たちが戸惑っているこの状況を。
ぞくりと背中に嫌な汗が流れて、あたしは一歩後ずさった。
「どうして逃げる?」
手を伸ばせば簡単に捕らえられるほど近くに玄蛇が立っていた。あたしは身構えるようにバッグを握り締めた。
「し、信用できないのよ!あんたのことが!!」
「信用ねぇ」
またも玄蛇が喉の奥で笑って、
グイッ!
あたしの腕を突如掴みあげた。
驚いて声も出せないまま、そのままベッドに倒される。
玄蛇がすぐに覆いかぶさってきて、あたしの脚の間に脚を入れると暴れられないように固定した。
「やめて!何するのよ!!」
唯一自由な腕を目一杯動かして、玄蛇のパーカーの襟元を掴む。