。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「私を信用してほしいなんて言わないし、過度な期待をされても困る。
私も君を信用しているわけではないしね。
だけど―――目的自体を履き違えてもらったら困る。
私は確かに君に“協力”をしているが、本来なら報酬をもらわなければ動かない性分でね。
金の代わりに私が君に要求したのは―――」
玄蛇が何を言いたいのか分かって、あたしは目を上げた。
「君の“復讐心”だ。
君が目的をたがえて、鷹雄 響輔と“仲良く”してるみたいだから。鷹雄にほだされて目的を見失ってもらっては困る。
私には君の力が必要だからね」
玄蛇がうっすらと微笑んで、あたしの頬をそっと撫で上げる。
冷たい手だった。
「“ネズミ狩り”の前に、まずは
―――“鷹狩り”かな」
あたしがごくりと喉を鳴らして、目を開くと玄蛇はまたもうっすらと笑った。
あたしは目をまばたいて眉を寄せた。
「…やめて、響輔に手を出さないで…」
あたしが震える声を絞り出すと、玄蛇はさも失望したと言う感じで吐息をついた。
その一瞬の隙をついてあたしは玄蛇の手を払いのける。
「…なんて、あたしが言うと思う!?」
バシッ!!
思い切りその横っ面を平手で張り飛ばしてやった。
一瞬でもあたしの演技に騙されたあんたが悪いのよ。
ネイルサロン仕立ての爪が玄蛇の頬を引っかき、あたしは玄蛇の目の前に拳銃を突きつけた。
オートマチックの拳銃は様式は良く分からないけれど、以前鴇田のものを見たときと同じように見える。
「私の銃…いつの間に…」
玄蛇が少しだけ驚いたように目をまばたかせて、
「手癖が悪くてごめんなさい?」
あたしが言ってやると、
「本当だね。でも益々君を好きになりそうだ」
余裕の笑顔を浮かべて、玄蛇の腕が伸びてきた。