。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「近づかないで!撃つわよ!!」
あたしはそう怒鳴ったが、実際拳銃の撃ち方なんて分からない。
ただ引き金を引けばいいと思っていたからその場所に強く力を入れたけれど、それよりも早く拳銃の上部を玄蛇が押さえ込んだ。
「残念だが、スライドを引かないと発射されない」
「!」
あたしが目を開いて目をまばたくと、「プロを舐めてもらっちゃ困る。でも好きだよ、そういうの♪」と言って玄蛇はあたしから拳銃を取り上げた。
「まったく、油断も隙もない。まぁ私も少し“おふざけ”が過ぎたようだが」
にっこり笑う表情はいつもの顔つきで、拳銃をジーンズの腰にねじ込むと、ゆっくりと上体を起こしてあたしの隣に移動してきた。
何をするのかと思って身構えたけれど、玄蛇はいつもと同じ調子でごろりと横になる。
つい数秒前に銃口を向けた相手が隣に居るってのに、玄蛇はまるで気にしてないように足を投げ出しリラックスしている。
「あんた何考えてるの?」
あたしにもう殺意なんてなかったけれど、代わりに呆れた。
「やらし~こと♪?」
「あそ。勝手にしてよね」
戦意喪失。なんなのよこいつ。肩の力が急に抜けてあたしもベッドに沈むように倒れた。
玄蛇の腕が伸びてきて、あたしの首の下に腕が入り込む。
「何?」訝しく聞いてみると、
「鷹雄 響輔の代わりになってあげようかと思って」
「はぁ?」思わず顔を歪めると、
「一晩だけの大サービス♪だ。私を鷹雄 響輔と思えばいいよ」
玄蛇が体を起こして、横になったあたしを覗き込んでくる。
あたしは目をまばたいた。
「ご希望の言葉あるなら、君にどんな台詞でもプレゼントするよ♪」
憎たらしいほど爽やかな笑顔を見て、あたしは目を細めた。