。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
玄蛇を覗き込んで考えていると、
「もう一つヒントをあげよう♪」と玄蛇は楽しそうに笑った。
「ヒント?」
「ああ、
“ネズミ”の一匹がどうやら虎間 戒に入れ知恵したらしい。クラブZ…畑中組が“裏”で何をしているのか、探るように仕向けた。
随分回りくどいが、ネズミたちも考えたな。その作戦の方向性は間違ってはいない」
玄蛇が面白そうに笑って目を細める。
虎間 戒に―――……?
「そんなのヒントになんないわよ。虎間を張ってれば見つかるってわけ??」
あたしが口を尖らせると、玄蛇はふっと笑った。
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
何せ若い彼らは私の予想もつかない行動に出るからね。そこが面白いんだけど♪
龍崎 琢磨もこの銃撃を機に一斉清掃するだろう。
虎間 戒がそれより先に動くか―――
どちらにせよ“ネズミ”たちには都合がいいことだな。
ヤクザ同士の争いで、相打ちしてくれるのをヤツらは狙っている。
直接関係がないにしても、私はこの成り行きが楽しくなってきたよ」
玄蛇は本当に楽しそうに笑って、頭の下で手を組んだ。
「相変わらず凄い情報収集力ね」
「これぐらい当然さ。やるからには徹底的に。それがプロだよ」
プロ―――だと言い切ったこいつの言葉には重みが感じられなかった。
いつでもこいつはそうだ。いつも事態を愉しんでいる。
ふざけたピエロみたいなヤツ。
…あれに似てる。トランプのジョーカー。
切り札にもなり得るし、相手を脅かす存在にもなる。
あたしはさっきちらりと見えたペンダントトップに手を這わせた。
あたしにとっては心強い味方だけど、だけどいつこいつに裏切られるか分かったものじゃない。
“M”は誰かのイニシャルなのだろうか。一瞬本名かと思ったけれど、こいつが本名のイニシャルを首に下げるほど洒落たことをするはずがない。
(ちなみにあたしはこいつの本名を知らない)
大切な人の―――イニシャルなのだろうか。
「ねぇ……あんた家族は?」
あたしは気になっていたことを聞いた。