。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
血を分けた妹が―――……
初耳だった。
「生憎だが彼女は私の存在を知らない。死んだと思っているだろうね。
兄として何もしてやれないのがもどかしいが、せめて近くで見守ることぐらい―――
できたら
と」
玄蛇は頭の下で手を組みながら遠くの方を見るように目を細めた。
妹のことを思い出しているのだろうか。
玄蛇に似て、背はやっぱり高いのかしら。顔は?美人かしら。性格は、まともだといいわね。
そんなことを想像しながら、こいつの目が初めて見せる慈愛に似た何かに見えて―――なんだか心臓が変な風に痛くなった。
その感情を否定するように、あたしは慌てて言った。
「知らなかったわ。あんたの妹だから顔はまぁ美人でしょうね。中身まで似てたらイヤだけど」
「美人だよ。きれいに―――なった」
玄蛇の声が切なげに揺れた。
こいつは―――本当に近くでその妹やらを見てきたのだ。
本当に近く―――ずっと…長い間―――…
誰なの。
あたしは唇を噛んだ。
「美人で頭が良くて、でも性格は私と正反対だ。一応釘を差しておくが、彼女を怒らせない方がいい。
あれは怖い女だよ。
君は“ワルい女”だが―――彼女は“怖い女”だ」
玄蛇はいつもの何を考えているか分からないピエロのような表情でちょっと笑った。
それが妙にその意味をリアルに伝えてきて、あたしは小さく身震いをした。