。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
TRRRR…
ふいにあたしのケータイが着信を報せて、ケータイに手を伸ばすと、
ディスプレイには『鴇田』の文字が。
「鴇田だわ。ちょっと静かにしててよ?」
あたしは玄蛇に念押しするように睨むと、玄蛇は肩をすくめた。
「はい。何よ。あたし何もしてないし何も知らないわよ」
開口一番にそっけなく言うと、
『何もしてないってなにがよ。明日のスケジュールの確認よ』
聞こえてきたのは、鴇田の声でははなくマネージャー(女)の声だった。
え?
見間違い?
訝しく思ってケータイを一旦耳から離し、もう一度確認するとそこにはやっぱり『鴇田』のメモリが表示されている。
「…どういうこと?鴇田の電話から掛けてるの?」
思わず聞くと、
『何わけ分からないこと言ってるのよ。今日は彼から一度も連絡がないわ。お父さんがどうかした?』
とぼけているわけじゃなさそうだった。
あたしの対応をおかしく感じたのか、玄蛇も身を起こして
『まさかyouあなた酔っ払ってるの?明日は大事な撮影があるんだから…』
と言うマネージャーの小言を最後まで聞かずして、玄蛇はケータイを奪い勝手に通話を切った。
その顔には険しい表情を浮かべている。
「何するのよ」
思わず玄蛇を睨んだけれど、玄蛇はまるで気にしてないようにケータイを勝手にいじっている。
「勝手に触らないでよ」
そう怒ったけれど、いつになく厳しい表情を浮かべた彼にあたしはそれ以上何も言い返せなかった。
「情報が錯綜している。イチ―――データを盗まれたな」