。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「響輔のケータイをちょ~っといじって、イチのケータイの内容をハッキングするようにしたんだ」
さらりと言った戒の言葉にあたしは目を剥いた。
「そ、そんなことできるの!」
「できないことはないです。ただ確実性はないですけど…」(←思い切り犯罪です)
とキョウスケが頷き、パソコンにデータを送信している。
「てか、それってプライバシーの侵害じゃね!?イチを騙して情報を盗んだってことだろ?」
「プライバシーもへったくれもねぇよ。あいつだって鴇田をけしかけて、俺たちを相撃ちさせようとしただろ?
これはイチと俺たちの『仁義無き戦い』だ」
仁義無き戦い……って、いやいやいや……
確かにお互いやってることは仁も義もへったくれもないが…
「これで一結が誰と連絡を取り合っているのか分かればいいんですけどね」
一人キョウスケはあたしたちの会話をスルーして、カチカチとマウスを操りながら画面をじっと見つめているものの…
どんどん転送されていく内容が
“響輔 080-XXXX-XXXX”と言う表示で埋め尽くされていくのを見て、
キョウスケの額に青筋が浮かんだ。
どうやらイチがキョウスケにストーカーしてるってのはホントのことみたいだ。
「…あの女!分け分からん!!」
またもキョウスケが唸りだして両手をわなわなと振るわせる。
「あれか!俺をハメるつもりか!殺して一通り眺めて、飽きたら埋める…どころかそのまま放置。
腐っていくのを観察するってワケだな」
「ど…どんな妄想だよ…」
あたしはキョウスケの異常とも言える態度にびくびく。
「相当キてるな~、ナニかあったん?」
戒が心配そう…じゃなくてちょっと面白そうにケケケと笑ってキョウスケをからかう。
「キス…スペルはK・I・S・S。Sが二つでドS」
キョウスケの変過ぎる呪文みてぇな独り言はとりあえず置いておいて…
「「き・キス!?」」
これにはあたしも戒も驚いて同じタイミングで顔を合わせた。
「騙されるな響輔。あれは罠だ。罠にはまったら終わりだ。あり地獄だぞ…」
キョウスケはマウスを操りながらブツブツ。
「キョウスケ…こ。怖ぇえよ」
あたしは思わず戒のパジャマの袖をきゅっと掴むと、
「面白そうだからこのまま様子見てみようぜ~」
と戒は楽しんでいるし。
「あり地獄…ありさんマークの引越社。引越し…するべきか。
ありさん…蟻酸。化学式はHCOOH……」
キョウスケワールドはどんどん広がっていき、戒じゃないけどキョウスケの独り言ちょっと面白い。