。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「蟻…鷹は蟻を喰いません。シロアリには殺虫剤。殺虫剤…持ち歩くべきか…」
キョウスケの妄想は止まらない。これが冗談じゃなく、本人がかなり真剣だから余計に面白い…じゃなくて怖い。
「分かった、分かった。殺虫剤今度買ってきてやるから、何があったか話せや」
終わりそうにないキョウスケの妄想世界を断ち切るように、戒がマウスを奪ってキョウスケをパソコンから引き剥がした。
それでも…
「しくしくしく…」
キョウスケは泣き声を漏らしてあたしの元に這いずるようにして近づいてくる。
「だ、大丈夫か?」
尋常じゃないキョウスケを心配そうに見ながらも声を掛けると、不意打ちに
ぎゅっ
キョウスケに力強く抱きしめられて、
「やっぱりお嬢はええですね。優しいし柔らかいしええ香りがするし」
何て耳元で甘く囁かれて、ピキリ!あたしは固まった。
「んぎゃぁあああ!」
「何してん!俺の嫁に堂々と手ぇ出すな!!」
戒がキョウスケの頭に思い切り踵落としを決めて、
バタっ
キョウスケはその場で倒れた。
「きょ、キョウスケが壊れた!?」
あたしはひたすらに驚きを隠せないで、あわあわと倒れているキョウスケと青筋を浮かべた戒とを交互に見比べるしかなかった。