。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
倒れたままのキョウスケを放置したまま戒はパソコンのデータを再び操りだす。
データはゆっくりと…だが確実にパソコンに転送されていた。
その殆どが“マネージャー”と“響輔”の二人だった。不明な誰かと不審な連絡を取ってる様子もない。
「一結め…俺をハメたって何の得にもならないぞ…」
キョウスケは未だにうつろな目でブツブツ。
「しばらくそのままにしておこーぜ」
戒はまるきり無視。だけどやっぱり気になるのか、マウスを操りながらも
「あの女に、強引に唇奪われたってワケか~。羨ましい…じゃなくて、可哀想にな」
おい!今羨ましい言わなかったか!?
あたしが睨みを利かせてると、
「まぁそれは冗談で~」と戒はわざとらしく笑った。
半分…いや、半分以上本気だったに違いない。
「俺なんて彩芽さん(ドクターの女)に腕捻り上げられたんだぜ?それに比べりゃいいほうだろ」
「お前が!?しかも彩芽さんに!?」
あたしが目を剥いて戒を覗き込むと、
「…あ、まぁちーと油断してたのってもある…」と戒はバツが悪そうに視線を逸らす。
「油断…」
てか美人の彩芽さんにヘラヘラしてたからじゃねぇのか!
「でも考えてみろよ?俺が幾ら油断してたからってあんな風にやり込められるなんざ初めてだぜ?やっぱあの女ただもんじゃねぇな」
と戒が考え込むように目を細める。
そーいや一緒に居たタチバナって男もどこか“普通”じゃなかった…
「んで、そのお前が疑ってる畑中組からは何か出てきたんかよ」
あたしの問いかけに戒は大きく頷いて、
「ちょっと叩いたら埃が出るワ出る。ヤクだけやない。裏カジノも開いとるみたいやで?」
裏カジノ―――……
「龍崎グループの経理システムには上がっていません。畑中組が単独で荒稼ぎしてるようですね」
復活したキョウスケがのろのろと起き上がり、あたしはその事実に目をまばたいた。