。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



いや、いやいやいやいや……


だって“この”ドクターだよ!!?


しかもこんなきれいな人!


いや…黙ってりゃドクターも結構なイケメンなんだけどね。


お似合いっちゃお似合いだけど。


しかも何か一緒に住んでるっぽいし!!


「まぁま、そんな格好で。大変だったわね。いらっしゃい、着付けなおしてあげるわ」


彩芽さんは穏やかに微笑んであたしを手招きして、あたしは言われるまま部屋にあがった。


あの変態ドクターの恋人って言うから、見かけによらずこの人も変わった人なんじゃないかと一瞬思ったケド、すっごい優しそう!


「私は書斎にでも居るから、終わったら声を掛けてくれないか?」


ドクターも同じ穏やかな微笑みを浮かべてあたしたちを見送ると、手前の部屋に入っていった。


リビングに通されて、あたしはキョロキョロ。


あたしが想像していた陰険でじめじめと暗い部屋ではなく、変わったデザインの明るい照明が白く部屋を照らし出していて、


変な瓶詰めのホルマリンも、骨格標本なんかもなく、いたってふつーのリビングだった。


ってかきれい。


彩芽さんに言われて白衣を大人しく脱ぐと、


ボロッ


中は散々だった。


恥ずかしくなって思わず顔を俯かせると、


「あら、まぁ。大変な目に遭って」


彩芽さんが苦笑をしてあたしの元にしゃがみこんだ。


その格好はつい数時間前に浴衣を着付けてくれた鈴音姐さんと同じ仕草だった。


「あなたのことは衛さんから聞いてるわ」


彩芽さんは僅かに目を伏せて、口元に淡い笑みを浮かべた。


ってか“衛さん”って!!


そーいや、あいつ“まもる”って名前だったな。


「私はね、銀座のクラブを経営しているの。前はお店でママとして出勤してたけど、今はチーママに店を任せて、私はもっぱら裏方ばかりなのよ」


彩芽さんは浴衣をなおしながら、おっとりと説明をくれた。


へぇ女社長か。すっげぇな。


そうには見えないけど、きっとヤリ手なんだろうな。


「でも衛さんと会ったのは御園医院で。お店で黒服をしてくれてた男の子がお客さまとトラブルがあって怪我しちゃったのよ。


付き添いで行って、診てくれたのが彼なのよ?」


「へぇ。素敵な出会いですね」


病院で芽生える恋かぁ。



なんか運命感じちゃうかも…って思ったケド、


相手はあの変態ドクターだぜ!?


どこに運命感じちゃったんだよ!


彩芽さんの“運命センサー”ぶっ壊れてんじゃないの!?






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