。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「お嬢、戒さん―――…」
キョウスケが瞳を揺らしあたしたちの方を見上げてきたときだった。
「何やこれ」
戒が声のトーンを低めて真剣にパソコンのモニターを睨んだ。
「どうした?」
あたしが不思議に思って戒の後ろ側からモニターを覗き込むと、
「データのダウンロードがでけへん。強制終了されてる」
「そ、それって…」
あたしはパソコンのシステムなんて全然分かんないから、不安そうに戒に問いかけると、
キョウスケも真剣な表情で覗き込み、
「貸してください」
戒の場所を奪うようにパソコンの前にあぐらを搔いて、キーボードを操るも、
画面には
“データバックアップの強制終了”と言う文字が出てきて、それどころか今までのデータがどんどん消えていく。
「どうやら気付かれたようですね。データが向こう側から削除されてる」
と、温度のない声を発して無表情にあたしたちを眺めるキョウスケ。
窓を打ちつける雨が強まって、風ががたがたと硝子を揺らした。
その音をまるでイチが鳴らしているようで、すぐ傍でイチが睨んでいるようで、そろりと振り返るものの、
当然ながらそこには誰も居ない。
怖くなって思わず戒の隣にぴたりとくっつくと、
「…気付かれた…?それってイチがキョウスケの仕業だって気付いたこと!?」
「イチが気付いた可能性は少ない。協力者が気付いたに違いないな」
戒も真剣な表情で腕を組んでいたが、
「「…ってことは、キョウスケが何でイチに会いに行ったか気付いたわけだ」」
あたしと戒は声を揃えて顔を合わせた。
サー……
雨の音ではない。
あたしたちの顔から血の気が失せる音が聞こえた―――気がする…
「ヤバイ!!こりゃかんっぜんにイチを怒らせた!」