。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
そんなことをぼんやりと考えながら目を閉じて、いつの間にかうつらうつら。
夢か現実か―――曖昧な意識の中、
降りしきる雨の中、あの声を聞いた。
ちょっと独特の低くて色っぽい、女の声―――
イチの声―――
♪かぁごめ、かごめ~籠の中のとりは
いついつでやぁる♪
かごめの歌……?
暗闇の中で白い着物の袂が揺れる。
ぎくりとして目をまばたくと、
じゃらっ
青龍会本部のあの長い回廊で聞いた乾いた数珠の音が聞こえてきた。
♪夜明けの晩に~
鶴と亀がすぅべった♪
―――それは古い時代の終焉(晩)と、全く新しい時代の夜明けを意味する歌。
「後ろの正面だぁれ♪」
肩を軽く叩かれて、あたしは固まった。
「言ったでしょう?龍崎会長と狐の嫁入りには気をつけてって」
くすくす偲び笑いがすぐ耳元でくすぐるように響いて、
「あなたがいけないのよ。あたしは忠告したはず」そう言われた。
振り向いてはいけない。
振り向いたら最後。
何故だかそう思ってあたしは身を強張らせながらも、それでもやっぱり気になってゆっくりと顔を振り返らせた。