。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
何が大丈夫なのか突っ込みたかったけれど、キョウスケはとりあえず起き出してくるつもりらしい。
まさか「怖い夢見たから心配になった」なんて言い出せなくて、
「あ、あはは…さっきの戒の話、あれ冗談だと思うから、あんまり真剣に考えないほうがいいよ~って」
あたしはわざと明るく言って慌てて手を振った。
「分かってますよ。俺は戒さんと付き合いが長いから。何が本気で何が冗談なのか」
「そ…そーだよな~」
「それを言いにわざわざ?」
キョウスケが含みのある笑みを口元に浮かべ僅かに首を傾ける。
う゛
あたしの考えなんてお見通しだな~…
まぁ今更こいつの前で隠し事したってしょうがないし。
笑われてもいいからちょっと話そうかな~なんて思っていたときだった。
キョウスケは立ち上がると、
「居間で話しましょうか。俺、喉渇いたし」
と部屋の外を目配せした。
喉が渇いたなんてきっといい訳だ。
それがキョウスケの気遣いであることが分かる。あたしはキョウスケに雪斗のことを話してないけど、こいつはいつだって気遣ってくれる。
密室に二人きりと言う状態を―――いつもさりげなく回避してくれる。
気付いているのだろうか。だけどそのことについてあたしは一度もキョウスケからその話を聞かれたことがない。
それもまたこいつなりの気遣いなんだろうな…
ありがとう。キョウスケ。
「……ここでいいよ。ゆっくり―――喋りたいし。てか飲み物はそこにあるじゃん」
あたしは布団の枕元に置いてあったペットボトルのお茶を指差して笑うと、キョウスケもちょっとほっとしたように頬をゆるめた。