。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
彩芽さんは手際良く浴衣を直しながら、さらに説明をくれた。
「畑中組って知ってる?青龍会直系の組よ」
知ってるも何も……戒が最初に騒ぎを起こしたクラブZもそこのシマだった。
「ってことはお姉さんもクラブZの関係者?」
「ええ、昔はあそこのホステスだったわ。よくある話よ。そこの経営者と愛人関係にあったの」
よくある話……
愛人関係??
この優しそうな人が愛人―――??
びっくりして目を開くと、彩芽さんは少し悲しそうに微笑んだ。
「それなりに好きだったし、私が今のクラブに独立するときにかなりの援助をしてくれたわ。だけどね、やはり愛人は愛人。
結局、本妻の人に子供ができて、私とはあっけなく終わり。
手切れ金代わりかしらね、あのお店を貰って……でも、元は畑中組の繋がりがあったから、なかなか青龍会とも縁が切れなくてね」
ああ……それで御園医院に。
あそこは一般の病院とはワケが違う。
あの病院内で働いてるのも、患者も大半が青龍会の筋もんだ。
「でも今は良かったと思ってるわ。
終わりのない不安を、希望のない未来を抱えるより、何もかも包み込んで守ってくれる衛さんと出会えたわけだから」
そう言った彩芽さんの表情はすっきりと冴え渡り、そしてその表情はきらきらと
きれいだった。
あたしには、あのドクターはひたすら意味不明で変人に見えるけど、
きっと彩芽さんにとってはそれ以外の何か―――あいつのいいところが見えるんだ。
そう感じた。