。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。


彩芽さんは手際良く浴衣を直しながら、さらに説明をくれた。


「畑中組って知ってる?青龍会直系の組よ」


知ってるも何も……戒が最初に騒ぎを起こしたクラブZもそこのシマだった。


「ってことはお姉さんもクラブZの関係者?」


「ええ、昔はあそこのホステスだったわ。よくある話よ。そこの経営者と愛人関係にあったの」


よくある話……


愛人関係??


この優しそうな人が愛人―――??


びっくりして目を開くと、彩芽さんは少し悲しそうに微笑んだ。


「それなりに好きだったし、私が今のクラブに独立するときにかなりの援助をしてくれたわ。だけどね、やはり愛人は愛人。


結局、本妻の人に子供ができて、私とはあっけなく終わり。


手切れ金代わりかしらね、あのお店を貰って……でも、元は畑中組の繋がりがあったから、なかなか青龍会とも縁が切れなくてね」


ああ……それで御園医院に。


あそこは一般の病院とはワケが違う。


あの病院内で働いてるのも、患者も大半が青龍会の筋もんだ。



「でも今は良かったと思ってるわ。


終わりのない不安を、希望のない未来を抱えるより、何もかも包み込んで守ってくれる衛さんと出会えたわけだから」


そう言った彩芽さんの表情はすっきりと冴え渡り、そしてその表情はきらきらと


きれいだった。


あたしには、あのドクターはひたすら意味不明で変人に見えるけど、


きっと彩芽さんにとってはそれ以外の何か―――あいつのいいところが見えるんだ。




そう感じた。







< 27 / 776 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop