。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「あ、あたしは!ファザコンとかじゃないぞ!」
慌てて言うと、
「はいはい。おやすみなせぇ」
マサは顎が外れるんじゃねぇかと思うぐらい大きな欠伸をふぁ~と漏らして、目を閉じた。
それでも思い直したように、ぱっと目を開けて天井を睨むと、
「俺としてはファザコンでいて欲しいですけどね。娘はまだやらんぞ」
マサ……戒のこと言ってんだよなぁ。
「会長から預かった大切な宝物を、そうやすやすとアイツには渡さねぇ」
『マサ、怖いよ。マクラ震えちゃう』
あたしはわざと(腹話術で)チャラけてマクラをマサの頬にすりすり。
マサのわずかに伸びた髭でマクラがざらざら音を立てた。
マサはくすぐったそうにちょっと笑い、
「さぁ早くお休みくだせえ。俺も眠い…」
と、また欠伸を漏らす。
「マサは薄情だなぁ。あたしゃまださっきの恐怖が残ってて、眠れそうにないってのに」
とマクラを持ち上げて語りかけるも、隣ですやすや寝息を立てているマサ。
灯りを消した部屋の中でマクラの白いボディーが浮かび上がり、
その色が―――
“雪”のように見えた。