。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



その数時間後―――


キリは俺を苛め飽きたのか、それでも俺の体に「逃がさんぞ」と言う具合で巻きつきながらぐっすりおねんね中だ。


長い睫を伏せて、色っぽいほくろのある口元を僅かに綻ばせて、


「まだまだよ、翔♪」


と楽しそうに寝言を呟き、びくぅ!俺はその場で固まった。


会長の言う通りキリはあったかいが、抱いて寝るにはデンジャラス過ぎる。


それでもまるで甘えた猫のようにすりよってくるキリの素肌が心地よくて、俺もいつの間にかうとうと…


できるかぁ!


キリめ、今までネコを被っていやがったな。いや、こいつは蛇だ。脱皮したと言える。


おのれ一結め!!お前があんなもの置いていかなければ、こんな目には遭わなかったものを!



――――

――


「と言うわけです。キリに苛められて、私は一睡もできませんでした。ちなみに苛めの内容は酷すぎて私の口からはとてもじゃないが言えません」


力なく言うと、


「だぁっはははははは!!」


只今、会長は俺の隣で腹を抱えて爆笑中。


何故だ、俺に何が遭ったか話してないのに彼はゲラゲラと笑い転げている。


「お前も男冥利に尽きるな。キリは女王様みたいなところはあったしな♪ムチでも出されたか??」


楽しそうに聞かれて、俺は思い切り顔をしかめた。


「ムチの方がよっぽどマシ。はぁ、虎間の姐さんやイチが可愛く思えますよ。キリに比べりゃお嬢なんてぬいぐるみだ」


「鈴音姐さんなぁ。あの人も強烈だよな~。それ以上に凄いって…」


凄いって…プププ、と会長は口の中で笑いを堪えながらまだ腹を抱えている。


その会長の笑いを遮るように、俺は軽く手を上げて彼を制した。




「と言うわけで、私は第二ラウンドのため今日は早く帰らせていただきます。男と女の戦いは仁義なき戦いですので」




そう宣言して、


おのれ!見ておれキリめ!!と復讐心をメラメラと燃やし、それをエネルギーにその日は通常の5倍のスピードで仕事を仕上げた。


「まぁお前も負けず嫌いだからな。枯れないようがんばれよ」


会長が下品に笑って、でも楽しそうにしているのを見て―――



これはこれでありか。



と思う。


(いや、なしだろ)



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