。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
さすがに気のいい彩芽さんも不審そうにしている。
「あ、あの!この白衣、ありがとうございました!あたし洗って返します」
あたしはわざと話題を逸らそうと、白衣を慌てて手に取った。
半分ほどが赤黒い血でべったりしてる。胸ポケットには青い字で
“M.Tokita”と刺繍されていた。
「あら、いいのよ。私がクリーニングに出しておくから。替えの白衣はたくさんあるし」
「いえ!やっぱりそーゆうわけには!きちんと漂白してお返しします!」
慌てて言うと、彩芽さんもそれ以上は言わずに、
「じゃ、お願いしちゃおうかしら」と優しく微笑んでくれた。
―――その後は、彩芽さんが紅茶を出してくれて、ほんの数分ドクターも交えて世間なんかもして、
その後あたしはドクターに龍崎家に送られていった。
「あの……ありがとうございます…」
礼を言うと、ドクターは爽やかに手を上げ、龍崎組にあがることなく走り去っていく。
家の車庫には、いつも置いてあるマサの車がなかった。
まだあいつら帰ってきてないってことだよな。
でも玄関に明かりがついてる。ってことはキョウスケか、
戒が帰ってきてるってことだよな。
彩芽さんのお陰で、何事もなかったかのように浴衣が戻っている。髪も結い直してくれた。
変なところはないはず。
それでも気になって家に入る前に鏡でチェックしてみた。
「うん、大丈夫!」自分に言い聞かせるように、ニッと笑うと、自分のぎこちない笑顔が鏡の中に浮かんだ。
あたし……こんなんで、戒と普通に話せるのかな。
大丈夫かな。
そんな不安を押し隠しつつ、
「ただいまー……」
恐る恐る、と言った感じで引き戸を開けた。