。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
戒が最初はびっくりして戸惑ったものの、あたしの背中に手を回すと、同じようにぎゅうっと抱きしめてくれる。
いつものふざけて狼チックなやらしい手付きじゃなくて、それは―――
その温度はあったかくて、戒の手付きは優しくて、
心地良くて―――安心する……
さっき叔父貴に一瞬でも感じた恐怖は微塵も浮かび上がってこなかった。
「どーしたの?珍しいな、お前から抱きついてくるなんて」
ちょっと笑って戒がぎゅっと抱き寄せてくれる。
一段高いあがりがまちで立ったままの戒は、いつもより高くて顎の先をあたしの頭に乗せて来た。
しばらくの間戒はそうやってあたしの頭に顎を乗せて静かに呼吸していた。
その息遣いさえも心地よくて、涙が出そうだった。
「もしかして、琢磨さんと何かあった―――……?」
あたしの頭の上でぽつりと聞いてくる戒。
探るような声音じゃなくて、不安げに揺れている。
この瞬間、色んなことがあたしの中で崩れる音を聞いた。
さっきあったことは全部戒に黙っていようと。
叔父貴の告白は、キスは全部あたしの中に留めておいて、誰にも喋らないでいよう。
そう思ったけれど、
それは間違いだった。
あたしは――――、一瞬でも戒を裏切ったんだ―――
「……戒」
あたしは戒のシャツをぎゅっと握ると、さっきあったことをちゃんと説明しようと思った。
全部、全部話すんだ。
隠し事は良くない。