。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「いや!やっぱ今はいい!!」
戒の大きな声が玄関に響いた。
バッ
え――――………
戒はあたしから顔を離すと、あたしの両肩を力強く握ってきた。
そのまま真正面からまっすぐにあたしを見据えてくる。
あの琥珀色をした淡い色がゆらゆらと揺れていた。
「…悪りぃ。自分から言い出してあれだけど…」
あたしは不安になって眉を寄せて戒を見上げた。
戒は「はは…」と乾いた笑い声を上げて、
「悪りいな、俺すっげぇかっこ悪いこと考えてる」
すぐに僅かに目を伏せた。
「かっこ悪いこと?」
「何かあったなんて、聞きたくない―――って、
逃げてる」
戒―――………
戒はあたしをもう一度引き寄せると、今度はふわりとあたしを抱き上げる。
相変わらずこの細腕からは想像もつかない、力強い腕にしっかりと抱き上げられ、
お姫様抱っこってヤツ??いきなりこんなことされると恥ずかしい……
と思ったのと同時に、ちょっと嬉しかった。
「ごめんな。かっこ悪くて」
戒はあたしの耳元で切なそうに、そっと囁いた。