。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
赤い縁取りのメガネ。黒いスーツ。
叔父貴の……秘書。
そんでもって……
あたしはちらりと鴇田を見上げた。
鴇田はあたしの視線に気付かず、
「お嬢たちを頼む」
と、いつもどおりの仕事モードで秘書に話しかけている。
てか「頼む」って??
「ああ、今日は俺の秘書にも同行してもらうつもりだ。お前たちを乗せて運転してもらう。
俺は鴇田の運転で後ろからついていくから」
後ろから……
あの狭い空間にこの問題あり過ぎるメンバーじゃないことに少しほっとした。
しかも
「本日同行させていただきます、アサギリと申します。わたくしのことはキリとお呼びくださいませ。
本日は安全運転でお嬢様方をご案内させていただきます」
アサギリと名乗った秘書はそつがない物言いで、きっちりと丁寧にお辞儀をし
でも機械的じゃない笑顔に、
何だか安心できた。
―――
「朔羅さん、どうぞ」
黒いプリウスの後部座席の扉を開けられて、中に促される。
ってかヤクザって何でこう“黒”ばっかなんだよ。
後ろを振り返ると、同じように黒いレクサス(鴇田の車)の助手席を、秘書のキリさんと同じように鴇田が開きながら、叔父貴が優雅に乗り込んでいた。
ちょっと目が合うと叔父貴は僅かに微笑んで軽く手を挙げる。
あたしは慌てて視線を逸らすと、キリさんの車に乗り込んだ。