。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
広い車内は、掃除が行き届いていて、ついでにいい香りが充満していた。
大人の女の人って感じの上品な香り。
あたしのすぐ隣に戒が乗り込んできて、助手席にはキョウスケが座ることになった。
物珍しそうにキョロキョロ辺りを見渡すと、運転席に赤いスマホが置いてあった。
充電器に繋いである。
キラキラした小ぶりのストラップがついていて、キリさんが乗り込むと、彼女はコンソールボックスにそれを移動させた。
随分手馴れた手付きだ。この人自身の車なのだろうか。
ってかこの人も極道なのだろうか。
そうには見えないケド。
何て考えているうちに、窓の外の景色が流れていることに気付いた。
「え?もう動いてんの?」
「ハイブリッドカーはさすがに音が静かだよな」
と隣で戒も感心したように顎に手を当てている。
うーん……確かに音も静かだし、さすがエコカー。
地球に優しい気がする…ケド
あたしたちの空間には優しくない!
しーん…
気まず過ぎる沈黙が、息苦しい!
か、戒何か喋れよ!
いっつも口から生まれてきたのか?ってぐらい煩いくせに。こうゆうときだけ無口になるんだから。
と言う視線で戒を見上げても、戒はあたしの視線に気付かないのか、ぼんやりと外を眺めている。
キョウスケは……
だめだ。あいつには期待できねぇ。
別に沈黙がイヤってわけじゃなさそうだし。
キリさんもいつも必要最低限しか喋らないし。こっちも慣れてそう。
でも、あたしは気まずい!