。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
*戒Side*
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** 戒Side **
龍崎 琢磨が贔屓にしているブランドの店は、都内に位置していた。
イタリアの若手デザイナーの店らしく、日本にはここ東京と、京都の二店舗しかないらしい。
店は白を基調とした西洋の美術館風建物で、看板も出てなかったから一見服屋とは思えないが、
「結構有名なデザイナーらしいですよ。セレブ御用達とか」
と響輔が説明をくれた。
「ってか何でお前がそんなこと知ってんだよ」
「一結が教えてくれたんですよ。彼女もここでたまに買い物するとか」
「イチ…ねぇ、お前あいつどーするつもり?」
「どうって……あれから連絡ないし、こっちからしてみても無視されてるし。どうしようもない、言うか…」
響輔が口ごもってため息を吐いた。
「ま、今は目先のこと考えようや。あれ?」
何となく琢磨さんの秘書、キリさんのプリウスを振り返ると、
充電器に繋いだままのスマホがコンソールボックスに置きっぱなしになっていた。
コーラル系の上品な色合いのキラキラしたストラップがついた赤いスマホ。
「お疲れ様です」
キリさんは後ろに続いた鴇田のレクサスが駐車場に納まるのを待っていて、琢磨さんが出てくると、扉を開けていた。
「おねーさん!ケータイ忘れてますよ」
俺が声を掛けると、キリさんはスーツのポケットを探った。
「あらやだ。ありがとうございます。忘れるところだったわ」
そう言ってキリさんはプリウスの運転席側のドアを開けて、身を屈めてケータイに手を伸ばしている。
スーツの上着が上に上がり、パンツ(ズボンのことね)から覗いた白くてきゅっとしまった腰、そして尻のラインがエロい……
なんて、朔羅に見られてたら怒られそうな視線を慌ててそらそうとしたが、
上着がめくれ上がってちらりと見えたその黒い影に
俺は目を開いた。