。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「別に何もしてねぇよ」
ホントのことだ?ちょっとお喋りしてただけだし。
「お前、キリさんを見てデレデレしてたぞ?」と朔羅はぷいと顔を背ける。
デレデレ!?……は、ちょっとしてたかも、だけど。
でも「俺は朔羅一筋だ!」
「説得力ねぇよ」
朔羅は肩を怒らせて、店の方で手招きしている琢磨さんの方へ歩いていった。
ああ、朔羅ぁ~と手を震わせていると、
「戒さん」
ぐい
と響輔に肩を引かれて、俺はまたも振り返った。
「何だよ、確かにデレデレしてたかもだけどな、誰だってあんなん見せられたら」
と言いかけたが、響輔は思いのほか真剣な顔つきで、
「お嬢をあの女……キリさんに近づかせんようにしてください」
響輔は緊張を帯びた関西弁で俺を真正面から見据えてきた。
「近づかせないでって何でや?」
「まだはっきりとは言えませんが、あの女、何か危険や」
俺はキリさんの方を見た。
キリさんは少し色っぽく口角を上げて、顎の先を店に向けている。
響輔が何も脈絡もなしにこんなことを言い出すヤツじゃない。
「分かった。とにかく朔羅をあの女に近づがせなけりゃいいんやろ?」
俺は短く頷いてキリさんの華奢な背中を見送った。