。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



無事………(?)家にたどり着くと、


「何でぃ!メガネ!!その顔どーしたんだよ!」


と、今日貸金業が休みで家に居たタクがびっくりしたように目を丸める。


「ああ…これ、階段から派手に落ちちゃって。それはもう“階段落ち”のように」


と戒は口の端を押さえながら、無理やりと言った感じで笑った。


「ああ、そりゃまた派手にやったな」


とタクの隣で同じ様に休みだった壱衣が苦笑を漏らした。


「…“階段落ち”って何?」


あたしはキョウスケの袖を引っ張ってこそっと聞いた。


「新撰組が池田屋に討ち入った際、尊攘の浪士たちの間で斬り合いが始まり、絡みの中で尊攘派の一人が階段から転げ落ち…」


「あ、もういいや。何か難しそうだし」


あたしはキョウスケの言葉を遮って、


「あともう少しで話しが終わるのに」とキョウスケはブツブツ。


「ってかお前見たまんまトロいのな」


と、タクは戒に向かってがははと笑っている。


タク……おめぇの目は節穴だな。こいつは獰猛で凶暴で凶悪な虎だ。


普段は可愛いネコちゃんの皮をかぶって、みんな騙されてる。


その可愛いネコちゃんは、ここでもまた口数少なく


「ご心配お掛けしてすみません」とだけ言うと、すぐに自室に引っ込んでいった。


「何でぃ、あいつ。よっぽど叔父貴の拳が利いたのか?あとで救急箱持っていってやろ」


と一人で計画していると、


「ほっといて大丈夫ですよ。お嬢が気にすることなんてないです」


隣でキョウスケは冷たい。





< 381 / 776 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop