。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「監視カメラの映像をハッキングって。そんなことできるの?」
「大抵のものなら情報を盗み出すことができるさ」
玄蛇は楽しそうに笑ってモニターを覗いている。
「随分ハイテクなのね。あたしの倍生きてるくせに」
あたしはパソコンにとんと疎い。たまにインターネットを見るぐらいだ。一応自分のパソコンを持ってるけど、立ち上げたのは買ってからほんの数回。
ケータイのツイッターやfacebookもやらないし、ブログなんてものも書いてない。
あたしの方がイマドキの若者らしくないのかな。
「てかそんなことしなくてもホテルで張ってればいいじゃない」
「そうゆうわけには行かない。万が一にでも私の姿を見られたら困るからね」
「その格好だったら誰もあんたが“あいつ”と同一人物だってことに気付かないわよ。
現にこないだだって駐車場のエントランスで響輔はあんたを目撃してるはずなのに全く気付かなかったし」
今日もあのときと同じ。金髪に黒いパーカー、ジーンズと言う格好だ。色の薄いサングラスもしている。
そのサングラスを取り外しながら、玄蛇は赤い目の目尻を下げてにっこり笑った。
「あのとき彼は君に夢中~♪だったからサ」
「夢中って言うより動揺してたんでしょ」
ちょっと目を吊り上げると、
「時代が変るとね、“殺し”の方法も進化していくわけですよ」
玄蛇はあたしの苛立ちをスルーして軽く笑うと、一瞬だけ目を細めた。
「来た。ビンゴ~」
玄蛇はパソコンを操ると、モニターにいくつか分かれていた場所と映像を一つだけピックアップしてあたしの方に見せてきた。
きらびやかなロビーをきょろきょろと顔を動かし、ゆっくりとカウンターの前を通り過ぎたのは
響輔だった―――
何しに来たの―――…