。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「鷹雄 響輔一人だけか。予想外だな。虎間もくっついてくるかと思ったが。鷹雄の独断かな?」
玄蛇は少し意外そうに顎に手を当て、
「武器を持ってないか調べてみよう。まぁ心配しないでも、彼らは飛び道具を使うことを好まないらしいから大丈夫だろうけど」
「どうやって調べるのよ」
「サーモグラフィーに掛けるのさ」
またも軽やかに言って玄蛇がパソコンを操ると、画面に横の線が入り、その線は上からゆっくりと降りていって、
ホテル内の様子が赤や青、緑と言った色に変わっていった。
「ふむ、やはり武器の類いは持ってないようだ。推定体温35度8分ってとこだね。低体温症?私があっためてあげたい」
最後の言葉は聞かなかったことにして。
「そんなことまで分かるの。あんたってホント謎。普段へらへらしてるからそういうことに疎そうなのに」
こないだだってそうだ。響輔にハッキングされたことを最初に気付いたのは、この男。
だけど玄蛇は全然大したことじゃないと思ってないのか、
「私からしたら君が何でそのヒールで運転できるのか、って言う方が謎だけどね」
と笑って軽く肩をすくめた。
食えない男ね。
「ねぇ、響輔を見つけてどうするつもりなの。殺すつもり?」
「まさか、今はまだ殺さない。響輔を餌に“彼女”を引っ張り出せればと考えてるのだが」
「彼女……?」
あたしが目をまたたくと、玄蛇は口の端で妖しく笑い
「出て来い。黄龍―――」
そう呟いて、響輔の画面半分が、
“朔羅”の隠し撮り画像に変った。