。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「だったら何故今響輔たちの動向を気にするのよ。
ほっといても大丈夫でしょ?それをわざわざあたしの車に無理やり乗り込んでまで、計画立てること?」
嫌味たっぷりで言ってやると、玄蛇はのんびりと頭の後ろで腕を組んだ。
「ただ単に仕事をこなすだけじゃつまらないじゃないか」
「―――つまらない…?」
「ああ。私は今までにたくさんの人間をこの手で殺めてきた。ターゲットとなった人間は私の存在に気付くと、恐れおののいて逃げ出すか、
私を目の前にするとみっともなく命乞いをするかのどちらかだ。
愚かな人間どもだ。私は一度狙った獲物を取り逃がすほどバカではないし、どんなに助けを乞われても
仕事をやり抜く。
残念だが私に人間らしい情なんてない」
「ふうん。だけど響輔たちは違うって?」
「そうだね。彼らは私の存在を知ってもなお立ち向かってくる。
彼らが持っていて私にないもの。
それが“仲間との団結”と“強い意志”だね。
もし私が負けるとしたら、私はその力に負けたことになる」
玄蛇は軽々しく『負ける』と言う言葉を使ったけれど、でもそれは『死』を意味するもの。
「そんな余裕ぶっこいてていいの?あたしはいやよ。あんたと仲良く心中なんて。死ぬときは一人で死んでね」
あたしのそっけない返事に玄蛇は気を悪くしたようではなく、
「大丈夫だよ、君に迷惑は掛けない」
とにっこり笑った。
「何せ君は愛しい共犯者なんだから」
玄蛇は楽しそうに笑ってまたもあたしの髪の先をちょっと手にとると、その場所にチュッとキスを落とした。