。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
15分程して薬の効き目がじわじわと現れはじめた。
子宮をぎゅっと締め付けるような独特の痛みも、おなかの中に鉛でも入ってるじゃない?と思われる程の重さも
徐々に薄らいできた。
それを見計らってか、キョウスケがちょっと話題を変えるように机に突っ伏しているあたしを真向かいから見下ろして、
「そう言えば鴇田さん、事故に遭ったみたいですね」
とさりげなく聞いてきた。
「何だよ、情報が早いな。戒にでも聞いたか?それとも叔父貴?」
あたしがのろのろと顔を上げると、
「いえ……」
キョウスケはいい辛そうに言葉を濁した。
じゃぁ誰から聞いたんだよ、ってアイツか……きっと変態タイガの野郎だ。
変態タイガはキョウスケのことをやたらと気に入ってたからな。
ってか今はそんなことどうでもいい…
「怪我はそれほどでもないらしいぜ?病院に運ばれた理由が貧血だって。貧血だぜ?」
あの鴇田が!と言って少しだけ余裕の出てきたあたしは軽く笑った。
そして、はっと思い出した。
「そーいや、ドクターの白衣。漂白剤に漬けなきゃ。血は落ちにくいんだよな」
慌てて腰を上げると、
「白衣?血?」
とキョウスケが目をまばたいた。
「…うん。昨日成り行きでドクターが白衣を貸してくれてさ。それに鴇田の血がべったり染み込んでるの。
きれいにして返すってドクターに約束したから、漂白しなきゃ」
白衣を貸してくれたいきさつは説明できなかった。
でもキョウスケはそれに対して深く突っ込まず、
「鴇田さんの?それ、俺がやります」
その申し出に、今度はあたしが目をまばたかせた。