。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「お前、先輩に迷惑掛けんなよ」
俺が顔をしかめるとタチバナは「ふん」と鼻息を鳴らして、
「お前は昔っからそうだよな。時間に細かいA型男め。女に嫌われるぜ?」と腕を組んだ。
「煩い。マイペースなB型野郎。お前は常に意味不明だな。それさえなけりゃ女にモテまくりだってのに」
負けじと言い返してやると、タチバナは目をぱちぱち。
「お前、その顔どーしたんだよ。せっかくの男前が台無しだな♪朔羅を襲って反撃されたか?」
タチバナはげらげらと笑い、腹を押さえている。
俺は絆創膏の貼ってある口元を忌々しそうに押さえながら顔をしかめて
「親子喧嘩だ。これぁ戒にやられた」
「血の気が多いところなんて親子そっくりだな♪」
「煩い、黙れ」
「まるで子供の喧嘩みたいね。二人とも落ち着きなさい」
彩芽は俺たちの会話を聞きながら、煙管の雁首の先(刻み煙草を詰める火皿のこと)に刻みタバコを詰め込んでいる。
約30cmの長煙管だ。
鈴音姐さんが吸っていた煙管と良く似ていた。
彩芽は自らその吸い口に口をつけて火を付けると、
「どうぞ」とスマートな仕草で勧めてきた。
(※茶会の場で煙管を吸うのはマナー違反ではありません)
毒入りでないことを証明してみせたのか。最初は探るように目を細めていたが、
俺は素直にそれを受け取り、ゆっくりと吸った。
その様子を眺めながら、タチバナが口を開く。
「で?お前は俺たちを脅しにきたってわけか?何で彩芽さんが虎間 戒に接触したことに気付いた?
ハッキングか?パソコンには一切データを残していないはずだがな。
しかもお前は息子と犬猿の仲だ。戒がお前に報告したとは考えられない」
俺は煙を吐きながらゆっくりとタチバナの方に顔を向けた。
タバコよりも重い煙の匂い。だけどそれはどこか高級感があり、上品だった。
「お前は俺が龍崎組に間者(カンジャ:スパイのこと)を飼っている、と言うことを思い浮かべなかったのか?」
俺が挑発するように笑うと、彩芽とタチバナは顔を合わせて、
「スパイを……?彼女たちの周りに…」
彩芽が目を開いて口元に手を当てた。