。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
俺は吸い口にもう一度口を付け煙を吸うと、
「そんなに意外か?
俺だって千里眼を持ってるわけじゃねぇ。目の届かない場所の動きは誰かが監視しなけりゃな。
だから彩芽、あんたが来たこともすぐに分かったぜ」
もう一度煙をゆっくりと吐き出すと、俺は目を細めて彩芽を見つめた。
煙の向こう側で驚いたように目をぱちぱちさせている彩芽とは反対に、タチバナはマイペースに顎に手をあて、
「分からないな。彩芽さんが龍崎組に出向いたのはかなり前だ。
ならば何故今頃になって言ってくる」
「少し様子を見るかと思った。お前らが幾ら戒をたぶらかしても、あいつらはすぐに動けないからな。
何せ情報が少ない。
だが俺はヤツらを甘く見ていた。白虎の若造二人だよ。
畑中組の裏カジノのことまで見つけ出しやがって」
忌々しく眉間に皺を寄せると、
「元々お前が潰す予定だったんだろ?なら手間が省けていいじゃねぇか」
とタチバナが面倒くさそうに首の後ろに手をやる。
「良くない。朔羅が絡んでるとなるとな。俺も黙ってはいられない」
はぁ
タチバナは大仰にため息を吐いて、
「相変わらず、溺愛してんだな」
と呆れたように目を細める。
だけどすぐにわくわくと楽しそうに、
「そう言えば、朔羅に会ったぞ。最後にあったときは彼女が6歳のときだったが、
いい女になったな♪」
………
「黙れ。朔羅を変な目で見んじゃねぇ。
その男前のツラを焼かれたくなかったら、今後そのような言動は慎め」
俺はタチバナの胸ぐらを掴んで、煙管の先をこいつに近づけ羅宇(ラウ:煙道の部分)でペチペチと頬を叩いた。
低く言ってやると、タチバナはちっとも堪えてない様子で肩をすくめてちょっと苦笑いを浮かべている。