。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
俺が乱暴に手を離すと、タチバナはスマートな仕草で襟元を直す。
「で?俺たちにこれ以上朔羅に関わるな、とお前は言いに来たんだろ?」
「それだけじゃない。どの道、朔羅は巻き込まれている。
お前たちのした仕打ちは、本来なら東京湾ものだが、
俺ももういい歳した大人だ。
水に流してやる、と言う代わりに
取り引きと行こうぜ」
俺がにやりとタチバナと彩芽に笑いかけると、彩芽は目を伏せてうっすらと笑い、
タチバナは眉をしかめている。
「いい歳した大人って……お前、高校のときとまんま変んねぇぞ??」
「うるっせぇ!それを言うんじゃねぇ!!
お前と同じ高校だったことを、俺は記憶から葬り去りたいんだ!
第一お前が俺に喧嘩ふっかけるからな、俺は鴇田に鼻の骨を折られるという惨事にな…」
「ああ、あんときは笑えたぜ!鼻にでっかい絆創膏貼ってやがったんですよ、こいつ」
ケラケラとタチバナは彩芽に笑いかけている。
彩芽はどう答えていいのか分からない、と言う感じで口元に手を当て苦笑。
………
今からでも遅くないな。
スネークの前にこいつを闇に葬るべきか。結婚した相手にゃ悪いが、その女には未亡人になってもらうしかねぇ。
ボキボキと手の関節を鳴らしていると、
「昔話に花を咲かせるのはいいけれど、そろそろ本題に戻らない?
私もそうゆっくりしていられる身じゃないので。
あなたの“取り引き”とやらを聞こうかしら」
彩芽は俺ににっこり微笑みかけると、俺を真正面から見据えてきた。