。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
俺とタチバナは十年来の付き合いだが、彩芽とは一年ほど前からだ。
御園医院に出向く用があって、たまたまその場に居た彩芽を衛から紹介されたときはびっくりした。
あいつ…生身の女も愛せたのか…
と言う驚きもそうだったが、この女の正体を知ったときは耳を疑った。
とうとう耳までいかれたか。幻聴が聞こえた気がする…
と一瞬心配になって
『本気か?お前、変なクスリとかやってねぇだろうな』と聞くと、
『正気です。クスリはやっていません。ちなみに私はアルコールも苦手なので、シラフです』と答えが返ってきた。
出会いはまぁ、結構ありがちなパターンで。
出先で具合を悪くしいてた彩芽を、たまたま居合わせた衛が介抱してやった。と言う…
まぁ…。ネ。ありがちだよネ。映画みたいだよネ。
「私が何の損得勘定もなしで、衛さんに近づいたと思う?」
彩芽は口調とは反対におっとりと笑う。
「は?」
「あなたに近づくためよ。龍崎さん」
………
「そのために衛を利用したのか…?」
数秒遅れで俺が目だけを上げて聞くと、
「なんてね。そう言ったらどうする?」
とまたも彩芽は悪戯っぽく笑う。
「別にどっちでもいいけど。衛がどうなろうと俺はあんまり興味がねぇからな」
「あら、冷たい」と彩芽は可憐に笑う。
ホント、食えない女―――