。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「俺はお前たちが仕組んだことを水に流してやる代わりに、情報開示をしてもらうぞ。
スネークの何を掴んでる」
薄茶が残り僅かと言うところで茶碗を持ったまま、俺は目だけを上げた。
タチバナと彩芽は顔を合わせて、彩芽の方がため息混じりに首を傾けた。
「様々な目撃証言によるとスネークの背格好は身長175cm~180cmぐらいで細身。一見サラリーマン風に見えるらしいわ。
でも該当するサラリーマン風の男はこの東京だけでもごまんと居るわ。
目撃した数少ない人間はスネークの話をすると、まるで精神崩壊したような怯えを見せるの。だから正しいのかどうか分からないところだけど」
精神崩壊―――ねぇ。
「それは仮の姿だ。ヤツはアルビノだ」
俺の言葉に二人は再び顔を合わせて目を開いた。
「……それはまた―――…分かりやすい特徴だな。何故分かった?」
「スネークの妹を抱え込んでいる。その女からの情報だ。逆算するとスネークは40前後の年齢になるな」
「その情報信用できるのか?」
タチバナが目を細めた。
「正直今のところ五分五分ってとこだな。その女のことは鴇田に任せてある。適当に泳がせて様子を見ているが、今のところ不審な動きはない」
「妹ってことは今も連絡を取り合ってるのかしら」
「いや。三十年ほど前に生き別れになり、以後連絡は途絶えている」
「ヤツは妹の存在を?」
「知ってるか知らないか、それすらも分からない」
「分からないことだらけね」
彩芽が吐息をつく。
「違うルートから探ろうぜ?彩芽は何で畑中組がコカインの入手にスネークが関わっていると知った?」
「畑中組が薬の密売に手を出していたことはかなり前から知っていたの。
売人である一人に接触したとき、そいつがスネークの存在をほのめかしたのよ」
「ヤツは畑中組と売人とを繋ぐパイプ役だ。
問題は何故畑中組にヤクを卸すようなことをしたのか」
タチバナが顎に手を掛け、唸るように前を向いた。