。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「ええ。一結はここに居てます。―――はぁ、貧血……無事だと言うことですね」
電話口から「ヒヨコちゃ~ん」とタイガのふざけた声が聞こえてきたけど、響輔は無理やり通話を切って、
「貧血で今輸血しとる最中やて。でも無事や。血が足りないだけで、大きな外傷もないようやし、命に別状あらへんて」
そう言われて、何かがあたしの中で崩れるのを今度は、はっきりと聞いた。
「おっと」
響輔が支えてくれなかったら、床に崩れ落ちていただろう。
「大丈夫か?」
そう聞かれて、あたしは震えながらも何とか頷いた。
良かった……
何故だか言いようのない安心感を覚えて、あたしは響輔にしがみついた。
響輔はあたしをベッドまで連れていってくれた。
手を引かれてよろけるように歩き出すあたしを、ゆっくりと促してくれた。
ベッドに座らされて、
「しっかりしい。大丈夫やて」
響輔はあたしの目の前にしゃがみこむと、あたしを下から見上げてそっとあたしの髪を撫でてくれた。
その不意打ちの優しさに、
「……響輔…」
またもじんわり涙が出そうになった。
そのときだたった。
~♪
響輔のケータイが鳴った。
「電話や、ちょうごめん」
そう断りを入れて、響輔が電話に出る。
あたしはその姿をじっと見つめた。
「もしもし?リコさん?」
リコ―――聞きなれない名前に、あたしの心臓がズキリと大きな痛みを発して縮まった。