。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
響輔の話を要約すると、つまりイチのヤツはやっぱり響輔のことを恨んでいたらしく
響輔の服とケータイを奪って、こいつが身動きできない状態にして
最初はハジキを向けてきたが、途中でその気が失せたらしく
一晩付き合ってくれたらこないだの件はチャラにする、と取り引きを持ちかけられたらしい。
付き合うってのはあれだな。大人な関係ってことだ。
まぁそれで一晩、監禁状態だったってことだ。
「さすがに一線越えるわけにはいかないし」
響輔が疲れたように吐息を吐き、
俺は「何で?」と問い返さなかった。
響輔の気持ちを知ってるし―――
「まさに生き地獄や。夏やし、薄着やし。こう密着されるとですね…」
響輔はわなわなと手を震わせて、だけどすぐにがくりと項垂れて、
「俺、サイテーやわ」
と自己嫌悪~に陥っている。
「何でだよ。結局しなかったんだろ?」
呆れたように目を細めて俺は響輔の背中に手を置いた。
「別に誰かと付き合ってるわけじゃないし、裏切ってるわけじゃないじゃん」
慰めるように言うと、響輔は僅かに振り返り、口の端で無理やりと言う感じでちょっと笑った。
「俺、前科者なんですよ。
―――さすがに二回も同じ間違いを犯せないって言うか」
前科者―――……?
俺が目を細めて怪訝そうに響輔を見下ろすと、響輔は自嘲じみてまたも笑い、
「すみません。独り言です」一言そう呟いて、
「眠い…」
やがて顔を伏せた。
「昨日のことは分かった。連絡できない状況だったのも分かった。
何はともあれ、
お前が無事で―――
良かった」
響輔の背中に顔を乗せて、ぽつりと囁くと、
すーすー…
小さな寝息が聞こえてきて、
こいつ!俺なりに今すっげぇいいこと言ったつもりなのに、寝てやがる!!