。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



さっき鴇田が事故に遭ったと聞いたときの衝撃とは違う。


それはじわりじわりとあたしの中を不快に侵食して、ドス黒い何かがにじみ出てきそうな……嫌な感情。


何だって言うんだろう……


そんな想いで心臓を押さえながら響輔の方を見ていると、


「―――はい。―――ええ、ちょっと急用が……ええ、大丈夫です」


響輔は電話の相手に相槌を打って無表情に遠くを見ていた。


標準語……あたしのときはいつだって関西弁だったのに。


それに何て言うの?何か受け答えが事務的な気がした。


電話は2分と掛からなかった。


「それじゃ、おやすみなさい」


最後にそう言い置いて、響輔はあっさり電話を切った。


「……あの…」何かを言いかけようとしたとき、またも響輔はケータイに指を滑らした。


「今度はどこに掛けるの?」


「どこて?お嬢に。遅なるときは連絡しなあかんし」





お嬢に―――





そうだ。


そうだった。


こいつの頭の中にあるのは常に朔羅のこと。


あたしのことを心配して見に来てくれたけど、それは朔羅の周りをあたしがうろちょろしてるから。


それだけ―――


こいつは―――厄介者の様子を見に来ただけ。


あたしの中で急激に何かが冷えていくのを感じた。






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