。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
千里か。
そうだ、千里だ。納得~
あいつ男って感じしねぇもんな。性別を超越した親友だし。
幼馴染の千里の家には小さい頃から良く遊びに行ってた。
千里ママは優しくて可愛くて、あたしが遊びに行くといつもケーキやらプリンやらを用意してくれた。
そいでもって千里は自分だって好きなおやつを、いつもあたしに少しだけ多くくれてたっけ。
その感覚に―――似ている。
タイガは変態だが、普通にしてると喋りやすいし。
最初は戒やキョウスケを汚いやり方で手に入れようとしてたけど、今となっちゃどこまで本気か分かんねぇな。
なんて考えて、はっとなった。
そだ。戒に連絡入れておかなきゃ。あいつはまだバイト中だけど何か心配性だし。
家に帰ってないって気付いたら騒ぐかも。
慌ててケータイを取り出すと、
「あれ??白ヘビさまだぁ」
とあたしのケータイにぶらさがったストラップを目ざとく見つけたタイガが、ゆらゆら揺れているケータイを指差した。
「白ヘビさまって…お前知ってんのかよ」
「守り神でしょ~?僕の生まれ故郷でも奉られてたよ」
千里のお母さんの実家が田舎だった。これはそこの土産だけど
偶然。
「へぇ、お前生まれって東京じゃねぇの」
「東京は小学生から。
僕の故郷はここよりずっと北の方―――
冬になるとさ、一面白い雪国に変わるんだ。―――寒い、寒い……ところだよ」
変態タイガは変態の目ではなく、どこか懐かしむように宙を見上げてぽつりと呟いた。
誰にでも故郷はある。すぐ戻れる距離でなくても、それは確かに存在する。
なのに
「あんなに寒くて辛い場所だったけれど、
たった一人の妹の手は―――いつも温かかった。
小さな手の小さな温もりだ。
『お兄ちゃん』ってさ、僕のあとをいつもくっついてた。
東京ではあんまり雪が降らないと気付くと
なんだか寂しいよね」
タイガの口ぶりはもう二度と戻れないような響きを滲ませていた。