。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



「おらぁ!!」


タイガの背後の男が声を上げて鉄パイプを振り上げる。タイガはひょいと、その攻撃をあっさりと避けて、それでも


「危ないなぁ。そんなもの振り回したら立派な凶器だよ」


とちょっと慌てながら襟元を直している。


「てめぇ!!ふざけたことぬかしてんじゃねぇ!」


また別の一人がタイガに向かっていった。





「僕、平和主義者なんだ。だからできれば穏便に行きたいところだけど、


今はうさぎちゃんを守らないとね」





タイガが低く笑ってネクタイを緩める。


空気が―――変わった。




静かな…



一体どこにそんな感情を押し殺していたのか。でも恐ろしいほどの殺気がタイガを取り巻いていて、その気配が足元を伝って這い登ってきそうだった。


別の意味で足が居竦んで、動けない。






―――……こいつ!




強い




そう思ったと同時、


襲い掛かってきた男の鉄パイプ攻撃を避けて、タイガは男の両肩を掴むと、そのままの姿勢で膝蹴りを男の鳩尾に埋めた。


かなりのスピードと威力だ。


戒も足腰が強靭だ。あいつの脚の威力は計り知れないものを感じる。


だけどこいつも―――…




ガタンゴトン…


電車が行き交う音が、男の悲鳴をかき消す。


鉄パイプ男が地面に沈むと、タイガはその男のわき腹をつま先で蹴り上げた。






「私も舐められたものだな。こんなもので倒せると思ったのか。




甘く見てもらったら困るよ」







にやり、と不敵な笑みを浮かべてタイガがその男を見下ろす。


それは冷淡で残酷な―――





あたしの知らないタイガの笑顔だった。





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