。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「お嬢、大丈夫ですか?」
転がった男を大またに跨いでキョウスケはあたしの肩を引き寄せてくる。
「あ…うん。大丈夫。だけど何でおめぇが??」
あたしの質問に答える前に、
「ひよこちゃ~ん!♪♪僕も怖かったよ~」
ぎゅっとタイガがあたしとキョウスケを抱き寄せて、
キョウスケは気持ち悪そうにタイガを引き剥がした。
「俺に触らないでください」
「おめぇ怖がるどころか、随分余裕があったじゃねぇか」
あたしがタイガを睨むと、
「マグレさぁ~。愛するうさぎちゃんを守るため♪火事場の馬鹿力ってヤツ?♪」
とタイガはまたもへらへら笑う。
火事場の馬鹿力?マグレなわけあるか。
ありゃ相当場慣れしてる感じだったぜ…
そんなタイガを警戒するように遠ざけて、キョウスケはあたしの背をちょっと押し、
「さ。行きましょう。きっと戒さんも心配してる筈」と言って促した。
「え~行っちゃうの~?」とタイガだけが不服そう。
そんなタイガを睨むように一瞥すると、キョウスケは声を低めた。
「大狼さん、何の目的があるか知らへんけど、お嬢に近づかんといてください」
キョウスケがたまに見せる怒りの表情と声―――……
ビクリとして思わずキョウスケを見上げると、キョウスケは射るような視線をすぐに緩めて
「さぁ、行きましょう」とあたしを急かした。
いつも冷静なキョウスケが珍しく、余裕のない表情で出口へと促す。
一刻も早くここから立ち去りたいような―――
何故だかそんな風に感じた。